オルタナティブ投資とは
オルタナティブ投資とは、伝統的な投資(株式・債券)とは異なる資産クラスへの投資を指し、非常に広範囲に渡ります。通常、低流動性・高リスク・高リターン・分散投資効果を特徴とし、機関投資家や富裕層(HNW)を中心に利用されています。
主なオルタナティブ投資のカテゴリー
プライベート・エクイティ (Private Equity)
- 未上場企業への投資を行い、成長支援や経営改善を通じて企業価値を向上させ、最終的にIPOやM&Aで売却しリターンを得る手法
- バイアウト、ベンチャーキャピタル、グロースエクイティなどのサブカテゴリーがある
- 企業の成長フェーズに応じた投資戦略を持ち、長期間の資本提供を通じて企業経営に深く関与するのが特徴
- 流動性が低いが、その分市場平均を上回る高リターンが期待できる資産クラス
ヘッジファンド(Hedge Fund)
- 伝統的な株式や債券の買い持ち(ロングオンリー)とは異なる戦略を駆使。市場環境に依存せずリターンを追求
- ロング・ショート戦略:割安な資産を買い、割高な資産を売ることでリターンを狙う
- レラティブバリュー戦略:同じセクター内で理論価格から乖離している価格の歪みを見つけ、裁定取引を行う。
- グローバル・マクロ戦略:金利、為替、株式や政策変動を基に市場全体を投資対象とする。市場のボラティリティが高い時に収益をあげやすい
- イベントドリブン戦略:M&Aや企業再編などの特定イベントに着目
- 市場が安定しているときにリターンを上げられる戦略もあれば、市場のボラティリティが高い時にリターンを上げられる戦略もある
不動産投資(Real Estate)
- オフィスビル、住宅、物流施設、商業施設、ホテルなどの実物不動産に投資する資産クラス
- 収益の源泉は インカムゲイン(賃料収入) と キャピタルゲイン(資産価値の上昇)
- インフレヘッジとしての機能を持ち、金利環境や景気サイクルの影響を受けやすい
- 1)コア投資:安定した収益を生む優良不動産への長期投資
- 2)バリューアッド投資:不動産の価値向上を目的としたリノベーション戦略
- 3)オポチュニスティック投資:市場の歪みを利用した高リスク・高リターン戦略
実物資産(Real Asset)
- 農地、森林、天然資源、土地、知的財産権、R&Dと特許、映画、アート、ワインなどへの投資
- 森林資源は人気のある比較的新しい資産クラス。木材の栽培と管理を通じて長期的な収益を目指す投資であり、土地とコモディティの両方に投資する性質を持つ。
- 木材価格の動向に基づいて収穫のタイミングを柔軟に調整できる
- 高いリターン、インフレヘッジ、高い木材のグローバルでの需要、グリーン投資である、株式や債券との相関が低い等のメリットがある
- デメリットとしては、市場での価格がないため評価が難しい、流動性が低い、投資ホライズンが長い、木材の価値は循環産業に連動する、自然災害の影響があるなど
インフラ投資(Infrastructure)
- インフラとは経済の健全性を支える基盤となる重要な資産やシステムである高速道路、空港、発電所、水道施設、通信ネットワークなど。社会基盤となるインフラに投資する資産クラス
- インフラ投資の大きな魅力は、参入障壁が高く、独占的な市場ポジションを持ち、安定したキャッシュフローを生み出す点にある
- 特に、インフラは競争の少ない環境で運営されるため、収益の安定性が高く、インフレにも強い
- インフラ投資は景気変動に左右されにくい「ディフェンシブ」な投資対象。景気変動に対して比較的安定したキャッシュフローを生み、長期的な運用に適している
プライベート・クレジット(Private Credit)
- 未上場企業向けの直接融資(ダイレクトレンディング)、メザニンファイナンス、ベンチャーデットなど
ダイレクトレンディング
- 2008年の世界金融危機では、欧米で銀行の救済が相次ぎ、それに伴い規制強化。銀行がリスク資本に関する規制に直面する中で、中小企業への融資は減少した。その空白を埋める形で、ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド、プライベート・クレジット・ファンドが融資を提供するようになった。
- 伝統的な銀行融資の代替として規模拡大中
メザニンファイナンス
- 中堅企業向けのファイナンスの中で最も古い手法の一つ。1980年代に通常の銀行融資が受けられず、株式発行による資金調達も避けたい企業向けの解決策として登場。
- 各取引は、借り手と貸し手のニーズに応じてカスタマイズされる。借り手が資本をどの程度調達したいか、またメザニン投資家にどの程度の支配権を譲るかに応じて、柔軟に構成される
コモディティ(Commodities)
- コモディティの種類:エネルギー(原油、天然ガス、ガソリンなど)、農産物(肉類、穀物、コーヒー、砂糖など)、金属(金、銀、アルミニウムや銅など工業用金属など)
- コモディティ価格は、企業活動の水準に強く影響される。景気循環の影響は、農産物、工業用金属、エネルギー商品などのコモディティ・セクターによって異なり、さらにセクター内でも商品ごとに異なる場合がある。例えば、エネルギー商品は景気循環に対して似たような反応を示す一方、農産物は商品ごとに異なる反応をする
- インフレヘッジやポートフォリオ分散に活用
ストラクチャードクレジット
- CLOやCDO、ABS, MBSなど
- CDO(Collateralized Debt Obligation)は「債務担保証券」を指し、社債や貸出債権(ローン)などを裏付け資産として証券化された金融商品
- 資産や他のポジションからのキャッシュフローを複数のトランシェに分割し、異なるリスク選好の投資家に配分する
- ポートフォリオのリスクをSPV(Special Purpose Vehicle、特別目的会社)を介して分配する仕組み
- リスクの大部分を負うジュニア・トランシェ(劣後トランシェ)から、最も極端な損失リスクのみを負うシニア・トランシェ(優先トランシェ)まで、リスク度合いに応じた複数のトランシェで構成される。
- この仕組みにより、元利金の支払いに対する優先劣後順位が設定され、損失が発生した場合には、支払優先度が低いジュニア・トランシェから順に損失を負担する構造である
デジタルアセット(Digital Assets)
- 仮想通貨、トークナイズド資産、NFTなど新興市場
オルタナティブ投資の特徴
- 情報の透明性が低い
- 低流動性(長期投資):一般的に換金しにくく、投資期間が長い(5~10年)
- 最低投資額が高い
- 高リターンの可能性:伝統資産とは異なるリスク・リターン特性
- 投資機会の多様性:市場の状況に関係なく利益を追求できる戦略が豊富
- 流動性が低いため頻繁に時価評価が行われず、ボラティリティが低く見えてしまう点に注意
ポートフォリオに入れると?
- 分散投資効果:株や債券との相関が低く、ポートフォリオのリスク分散に貢献
- リスク耐性のある資産運用
- 資産運用の目的の多様化の実現